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zoom RSS ウンベルト・サバ書店

<<   作成日時 : 2014/03/01 01:18   >>

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”州全体のものとしては信じられないほど薄い番号簿のトリエステの部分には、古書店も入れて本屋はほんの五、六軒だったから、サバの書店は気ぬけするほどあっけなく見つかった。サバが生きていたころは、たしか≪ふたつの世界の書店≫という名だったのを、番号簿では≪ウンベルト・サバ書店≫と名が変わっていた。味も素っ気もない、観光客向けのその名称は、書店を引きついだ人たちの無神経さを物語っていた。番地はサン・ニコロー街、どうやら海岸通りを直角に交差する道の一本であるらしかった。”
    (須賀敦子『トリエステの坂道』/トリエステの坂道)




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須賀敦子さんがまず訪ねようと思ったサバが経営していた書店。
今は「味も素っ気もない」「無神経さ」とぴしゃりとやりこめられてしまった書店。
私が訪ねた時もまだ、「味も素っ気もない」名の書店のままだった。
時は日曜、書店はシャッターもぴしゃり、閉まっていて、
観光客向けの、サバとジョイスの写真に迎えられた。




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私はまだ、サバに大いなる思い入れがないからかもしれないが、
閉じられた書店のウィンドウに飾られた、トリエステの地図は、
割といいセンスなんじゃないか、と思う。
須賀さんの書くトリエステを想いながら。



”街にただようフレンチ・フライの匂いは、もうひとつ、私がトリエステに惹かれる理由に気づかせてくれた。サバの中にも綿々と流れている異国性、あるいは異文化の重層性。ユダヤ人を母として生まれただけではなくて、サバはこのトリエステという、ウィーンとフィレンツェの文化が合流し、せめぎあう街に生きたのだった。サバが書店につけた名、ふたつの世界、にはそんな意味も含まれていたのではないか。そして詩人は痛みとともにそれを知っていた。ふたつの世界に生きようとするものは、たえず居心地のわるい思いにさいなまれる運命を逃れられないことを。”
    (須賀敦子『トリエステの坂道』/トリエステの坂道)




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”たとえどんな遠い道のりでも、乗物にはたよらないで、歩こう。それがその日、自分に課した少ないルールのひとつだった。サバがいつも歩いていたように、私もただ歩いてみたい。幼いとき、母や若い叔母たちに連れられて歩いた神戸の町とおなじように、トリエステも背後にある山のつらなりが海近くまで迫っている地形だから、歩く、といっても、変化に富む道のりでさほど苦にはならないはずだった。”
    (須賀敦子『トリエステの坂道』/トリエステの坂道)


サン・ニコロー街を抜けたところで、サバの銅像に出会った。
いつも歩いていたというサバの、歩く姿の銅像。
手と、そして歩き続けた靴が、人々に触られて、金色を放っていた。
私も小さくサバと握手をしてから、トリエステの坂道をのぼる。

     Sep13     Trieste/ITALIA





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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
横断歩道上の銅像には驚きますね。敬愛とユーモアの入り交じった作意は二つの世界の象徴でしょうか。
かおたいまきしん
2014/03/20 18:04
>かおたいまきしんさん
サバはとにかくよく歩きまわる方だったそうです。
地元の人々にも愛されていたのでしょうね。
なお
2014/04/17 23:42

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